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台湾の野良動物文化——十二夜の涙からゼロ殺処分の約束まで

ある島がいかにして街角の命との向き合い方を学び直したか——善意が制度を変えた物語

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30秒概覽

台湾の街を歩けば、特別な存在に出会う。耳に小さな切れ込みの入ったもの、朝食店のおばちゃんの後ろを尾を振りながらついて歩くもの、廟の石段に寝そべって島の最も古い住人のようにくつろいでいるものたち。

2017年2月6日、台湾はアジアで2番目、東アジアで初めて「ゼロ殺処分」政策を実施した国となった。しかしその道のりは善意から始まったのではなく、島全体を泣かせた一本のドキュメンタリーから始まった。

主要データ:

  • 台湾全土の野良犬の推定数:約15万5,000頭(農業部2022年調査)
  • 2017年より全面的ゼロ安楽死(ゼロ殺処分)を実施
  • 全国公立収容所:32か所
  • 登録ペット犬猫:300万頭超
  • 収容所の譲渡率:2012年の16%から直近の80%以上に向上

なぜ重要か

台湾の野良動物の物語は、一枚の鏡だ。

「見て見ぬふり」の無関心から「その命も命だ」という覚醒へ——社会がどう変化したかを映している。この過程は政府主導ではなく、一本の映画・一群のボランティア・次々と起きたSNSムーブメントが推し進めた。台湾社会の重要な一面を示している:市民が気にかけると決めたとき、制度はついてくる

外国の観察者にとって、これは台湾の社会的価値観を理解する切り口でもある——国家が最も声を持たない命をどう扱うかは、往々にしてすべての周縁的存在をどう扱うかを物語る。

十二夜——一本の映画が国を変えた

収容所の死のカウントダウン

2013年以前、台湾の公立動物収容所は残酷だが「合法」の制度を運用していた:野良動物が捕獲されて収容所に入ると、12日以内に引き取り手や里親が見つからなければ安楽死処分された。

病気でなくても死ぬ。引き取り手がいなければ死ぬ。

毎年、何万頭もの健康な犬猫がこの12日間のカウントダウンで命を落とした。収容所の職員は動物の世話をしながら安楽死を執行した——精神的に崩壊した人も多く、毎日の処分に耐えられず離職する獣医師もいた。PTSDを発症した人もいた。

九把刀の賭け

2013年11月29日、一本のドキュメンタリーが公開された。

『十二夜』は監督のRaye(黄鑫聖)が撮影し、人気作家の**九把刀(グウ・ぱーとあ)**が製作・出資した。九把刀は動物保護活動家ではなく、殺し屋や恋愛を書いたベストセラー作家だ。しかし彼は収容所から救い出した犬を飼っていた。「知らないふりはできなかった」と彼は言った。

ナレーションなし、説教なし。カメラは収容所の中に置かれ、犬たちの12日間を静かに記録した。

入所したとき、まだ尾を振っていた。誰かが家に連れ帰ってくれると思っていたのだろう。
3日目、食事を拒み始めた。
7日目、目の色が変わった。
12日目、多くの観客は涙で画面が見えなくなっていた。

『十二夜』は興行収入5,000万台湾元を突破——ドキュメンタリーとしては天文学的な数字だ。しかしより重要なのは、「収容所での安楽死」という問題が動物保護界の議題から全国民の憤りへと変わったことだ。

涙から法律へ

2015年1月、立法院が「動物保護法」改正案を三読可決した。

公立動物収容所での収容動物への安楽死を停止し、2年間の猶予期間を設ける。

2017年2月6日、「ゼロ殺処分」が正式に施行された。

一本の映画、2年間の活動、一本の法律。台湾の野良動物の歴史は「十二夜以前」と「十二夜以後」に切り分けられた。

ゼロ殺処分の後——問題はそこから始まった

美しい約束の現実の重み

ゼロ殺処分の精神は感動的だが、現実はすぐに牙を剥いた。

安楽死をしなくなると、収容所の動物は譲渡されない限り出ていかない。しかしすべての犬が「かわいい」わけではない。年老いた犬、大型犬、気性が荒い犬、見た目が愛らしくない犬は、永遠に収容所で暮らす。

収容量の爆発が第一の問題だ。全国32か所の公立収容所の多くは、元々スペースが不足していた。ゼロ殺処分施行後、一部の収容所では動物の数が規定収容量の2〜3倍になった。鉄格子の中に犬が詰め込まれ、喧嘩・感染症・ストレス行動が広がった。

「生かしながら苦しめることが、安楽死よりも本当に人道的なのか」という声が上がった。この問いに今も標準的な答えは出ていない。

収容所職員の見えない傷

あまり注目されないが、収容所の職員はこの制度の中で最も多くを担わされた人たちだ。

ゼロ殺処分前は安楽死の執行を強いられ「死刑執行人」と批判された。ゼロ殺処分後は過負荷の環境でますます多くの動物を世話しながら「なぜちゃんと世話しないのか」と批判される。どちらの政策でも、最前線に立つ人は板挟みだ。

2016年、桃園市の獣医師・簡稚澄は安楽死執行の心理的プレッシャーと外部からの非難に長期間さらされ続けた末に、自ら命を絶った。彼女が使ったのは、動物の安楽死に使っていたのと同じ薬剤だった。

この出来事は台湾社会を震撼させた。動物の権利を議論する中で、執行者のメンタルヘルスを真剣に考えた人が誰もいなかったことに、初めて気づかされた。

TNR——もう一つの道

耳の切れ込みの物語

台湾の街で耳の角が少し欠けた犬や猫を見かけたら、それは怪我ではなく物語だ。

その切れ込みはTNRの印。TNRとはTrap(捕獲)・Neuter(去勢・不妊手術)・Return(元の場所へ戻す)の頭文字だ。野良動物を捕まえて手術をし、耳に印をつけて元の場所に放す。

論理はシンプルだ:殲滅はできないのだから、繁殖を止めればいい。一世代、二世代、三世代と経てば、自然に数は減る。

台湾のTNRは当初民間の動物保護団体が自発的に進め、法的グレーゾーンを漂っていた。2015年の動物保護法改正後、TNRは正式に政策ツールとして位置づけられ、各県市政府が予算を組んで動保団体と協力して大規模TNRを実施するようになった。

地域猫・地域犬の不文律

TNRは手術だけではない。その背後には地域の生態管理の全体系がある。

台湾の多くの地域に「餌やり人」がいる——野良動物に定期的に餌を与える地域住民だ。毎日決まった時間・場所に餌を置く。この餌やり人とTNRボランティアの間には、非公式だが長年機能してきた協力体制がある。

  • 餌やり人が観察し、新しい顔を見たら通報
  • ボランティアが捕獲籠を持って捕まえ、手術へ
  • 手術後に元の場所へ戻し、餌やり人が引き続き世話
  • 譲渡できそうなら写真を撮ってSNSで里親募集

この仕組みに公式文書はない。しかし台湾の無数のコミュニティで静かに機能している。動力源は法律でなく、おばちゃんの「放っておけない」心だ。

「購入より譲渡を」

スローガンの社会的効果

台湾で「購入より譲渡を(以認養代替購買)」というスローガンの浸透度は「ゴミは出さない」くらいに高い——実践していなくても、一度は聞いたことがある。

このスローガンが変えたのは消費行動だけでなく、社会的価値観だ。10年前は純血種の犬を飼うことがステータスだった。今では8万元払ってフレンチブルドッグを買ったとSNSに上げると、コメント欄で炎上しかねない。逆に収容所から引き取ったミックス犬を投稿すれば、「素晴らしい」のハートが並ぶ。

誰も呼びかけていないが全員が参加している社会的価値の逆転だ。

「ミックス犬(米克斯)」という言葉自体が台湾の動物保護文化の産物だ。学術用語ではなく、ネットコミュニティが生み出した表現で、「雑種」を名前のある・アイデンティティのある・記憶される存在として再包装した。

2021年法改正——ペットショップからの展示販売禁止

台湾は2021年にさらに改正を行い、ペット業者による店頭での犬猫の展示販売を禁止した。ガラス越しにたくさんの子犬子猫が並ぶあの光景が、台湾のペットショップから消えた。購入したければ、認可を受けた繁殖業者から直接のみ購入できる。

この法律の論理:ガラス越しの子犬を見たときの衝動買いが、飼育放棄の第一歩だ。

学校の犬・学校の猫——最も特別な命の授業

台湾には世界でも珍しい教育実践がある:野良動物を校内で飼うことだ。

収容所や路上から来た犬猫が「校犬」「校猫」として受け入れられ、専用の居場所があり、生徒が世話をし、時には自分のInstagramアカウントまで持つ。

これは野良動物を収容するだけでなく、生きた命の授業だ。

子どもたちが学ぶのは教科書の「動物を愛護しよう」という5文字ではなく、

  • 撫でられたくないときは撫でてはいけない
  • 病気になったら病院へ連れて行く、それにはお金がかかる
  • 老いて逝ったとき、喪失と向き合う

全国で約700校以上が校犬や校猫を飼う。教育部は2019年に「優秀校犬校舎」の表彰まで設けた。

試験の点数を重視する教育体制の中で、野良犬が子どもに「責任」を教えるスペースを割いている——それ自体が台湾らしい。

まだ解決されていないこと

野良犬と人との衝突

ゼロ殺処分後も、街の野良犬の数は大きく減っていない。捕獲されて死なくなっただけで、いまもそこにいる。しかし「そこにいる」ことが新たな摩擦を生む。野良犬がバイクを追いかけたり、人や他の動物を咬んだりする事件は続いている。山間部では野良犬の群れが野生動物——石虎(ベンガルヤマネコ)・センザンコウ・キバノロ——を脅かしている。

動保団体と生態学者は鋭く対立することがある:野良犬を守る人と野生動物を守る人が同じ山で全く違う世界を見ている。

非合法な繁殖場

「購入より譲渡を」の声が大きくなるほど、地下繁殖場は深く潜る。合法業者は厳格な管理を受けるが、非合法な「繁殖工場」は依然として存在する。そこでは母犬が生産機械として扱われ、身体が限界を迎えるまで出産を続ける。役目を終えた種犬は運が良ければ動保団体に救出されるが、運が悪ければ山に捨てられ、新たな野良犬になる。

構造的な飼育放棄問題

最も多い飼育放棄の理由は引っ越し・家主がペット禁止・家族の反対・時間がないこと。しかしよく見ると共通点がある——最初に飼うと決めたときに十分考えていなかった

台湾の賃貸市場はペットに極めて厳しく、家主がペット禁止というのがほぼ常態だ。社会が譲渡を奨励しながら、ペットを飼う人が部屋を借りられない——これ自体が構造的な矛盾だ。

驚くべき事実

  • 台湾の野良犬の密度は1平方キロメートルあたり約4.3頭——野生動物より身近な存在
  • 『十二夜』の興行収入は5,000万台湾元超——台湾ドキュメンタリー史上最高クラス
  • 年間のTNR手術件数は10万件超
  • 校犬・校猫を飼う学校は700校以上
  • 簡稚澄獣医師の事件後、収容所獣医師への心理カウンセリング資源が制度化
  • 台湾は東アジア初のゼロ殺処分実施国
  • 台湾の動物譲渡プラットフォームは20以上存在
  • 2023年統計で台湾の飼い猫の数が初めて飼い犬を超えた——都市化が猫を選ばせている

一つの島の選択

台湾の野良動物の物語は、「問題が解決された」物語ではない。

「社会が気にかけることを学んだ」物語だ。十二夜の衝撃から、ゼロ殺処分の約束へ、TNRの日常実践へ、校犬が子どもたちに教えることへ——一歩一歩が完全ではなく、一歩一歩にコストがあり、しかし一歩一歩は確かに前へ進んだ。

街角の犬は耳に欠けがあって、朝食店の軒先で日向ぼっこをしている。自分がかつて政策論争の主役だったことも、ドキュメンタリーの主役だったことも、SNSの主役だったことも知らない。ただ今日も誰かが餌を置いてくれたこと、陽が温かいこと、この通りがまだ自分の名前を覚えていることを知っている。

参考資料

About this article This article was collaboratively written with AI assistance and community review.
野良動物 動物保護 ゼロ殺処分 TNR 十二夜 収容所 譲渡文化
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