1967年に建設された軍事建築は、31年間無数の兵士を金門や馬祖へ向かう軍艦に見送り続け、20年間の眠りからある父娘によって目覚めました。それは今、『ロンリープラネット』が推薦する「高雄のおすすめ美術館」です。
直感に反する出発点
もしあなたが鼓山一路 111 号の入り口に立っているなら、壽山森林に囲まれた灰色の建物を目にします。口型の回廊から差し込む光は、展示室にはイタリアのランプデザイナーの回顧展が陳列されています。あなたはたぶん想像もつかないでしょうが、60年前、この廊下に立っていたのは、離島へ船で向かう20歳の兵士たちであり、彼らの母親が門の前で手を振り、桟橋に停泊する中華民国の軍艦は36時間かけて金門に到着したのです。
ここは台湾に残る冷戦時代の金馬賓館です。 基隆にあった施設は解体され、高雄だけが残っています。それは誰かが意図的に保存したからではなく、あまりにも長い間忘れ去られていたため、あるホテルグループの創業者が見過ごすことができず、消滅させないようにしたからです。
一つの建築の三つの人生
第一章:送別と再会(1967年~1998年)
1958年の八二三砲戦の翌年、高雄市政府は金馬前線の将兵を特別に受け入れる賓館を建設することを決定しました。しかし、建設地は養殖池を埋め立てたものであり、地盤が安定するまでに8年かかりました。
1967年9月26日、軍人友社によって新台幣1,200万元で建設された金馬賓館が正式に開館しました。同時に基隆の施設も完成し、南北に同じ目的を果たしました。それは、「金馬賞」に選ばれた兵士たちが船に乗る前に立ち寄れる場所を提供することでした。
「金」は金門、「馬」は馬祖です。冷戦時代の地図上では、これらはベルリンの壁や北緯38度線と同じ時代に属していました。
台湾各地から車で集まり高雄金馬賓館に到着した兵士たちは、ここで天候が良くなるのを待っていました。桟橋へ向かう道すがら、雑貨店の店員は「船旅は1日半かかる、船内には食べ物がないので急いで買いなさい!」と声をかけていました。新兵たちはパンや炭酸飲料、乗り物酔いの薬を買い集めました。そして、現在の光栄桟橋(当時の13番桟橋)で、震える足取りで軍艦に乗り込みました。
31年間、金馬賓館は数えきれないほどの別れと再会を見届けました。ある別れは1年かもしれないし、2年かもしれないし、もっと長いかもしれません。別れた後、愛する人を失う人もいれば、無事に帰還する人もいました。高雄港は静かにこれらすべてを目撃しました。
第二章:忘れ去られる(1998年~2016年)
1998年、両岸関係が緩和するにつれて、金馬賓館はその役割を終えました。建物は交通部の鉄道改修工局に移管され、高雄の地下鉄化の指揮本部となりました。2012年に鉄道工局が移転した後、半世紀の記憶を背負ったこの建物は壽山の麓に放置され、回廊には雑草が生い茂ることになりました。
基隆の金馬賓館はこの期間に解体されました。高雄に残っていたのは、まだその番が来ていなかっただけです。
第三章:廃墟の中の光(2016年~2018年)
2016年、高雄市都発局は民間力を導入してこの遊休空間を活性化させるため入札を行いました。御盟グループの創業者である邵永添氏と娘の邵雅曼さんが初めて金馬賓館に入ったとき、彼らが見たのは「ほとんど廃墟」のような建物でした。すべての設備は老朽化しきっており、建物全体が忘れ去られていたのです。
しかし、邵雅曼さんはここにある光と影に惹かれました。
彼女は後に『VERSE』誌のインタビューで、「美術館の窓の外から眺める森林と青空が織りなす景色は、喧騒から遠く離れた山奥にいるような感覚を覚えます」と語っています。軍事建築でありながら、壽山に隣接しているおかげで、この場所は多くの都市型美術館が夢見ている自然環境を有していたのです。
永添芸術は「建物の時代的意義の復元」を原則として修復を進めました。彼らは職人を招き、伝統的な工法を用いて、元の石目や磨かれた石の質感を回復させました。さらに、生産が終了した白い磁器タイルを見つけ出し、回廊を再建しました。しかし、最大の改変は古いものを直すことではなく、「開く」ことでした。元々閉鎖的だった「ㄇ字型」の兵舎を「口字型」の開放的な回廊に変え、風と光が自由に流れ、展示空間が壽山森林と呼応するようにしたのです。
2018年11月28日、金馬賓館は現代美術館の名で再開しました。
なぜ「ALIEN(エイリアン)」なのか?
英語名 ALIEN Art Centre は宇宙人の美術館のように聞こえますが、命名のインスピレーションはスティーヴン・チャーンスパイカーの『E.T.』—指を繋ぐ瞬間に由来しています。運営チームの説明では、「ALIENには未知に向き合うという意味がある」とのことです。
このネーミングは金馬賓館の歴史と呼応しています。1967年にこの建物にいた兵士たちも、未知なるものに直面していました—海峡の対岸の未知、戦争の未知、無事に帰れるかという未知です。50年後、同じ建物に来場する人々が向き合うのは、もう一つの未知です—現代アートが開く知覚の境界線です。
一つの建築、三層のキュレーション
金馬賓館の各階は異なる役割を持ち、まるで未来から歴史をめくる本のような存在です。
1階は実験芸術と多様な形態の芸術実験に重点を置き、現代的なテーマに対応し、新メディアアートや彫刻作品を頻繁に導入しています。
2階は応用芸術空間であり、アーティストの回顧展に適しており、レストラン ALIEN All-Day Lounge と組み合わされています—壽山の緑に囲まれた窓際でコーヒーを飲み、桂花蜜豆乳(金門の朝食文化へのオマージュ)と閩式焼餅を食べることは、この美術館における最も贅沢な体験の一つです。
3階は視野が最も広く、森林と空を見渡すことができ、デザイン性が強く光影の変化に富んだ作品が多く展示されています。
父娘のタッグ:狂気から禅へ
金馬賓館を支えるのは一組の特別な父娘です。父親である邵永添氏は御盟グループの創業者であり、60歳になって初めて絵を描き始めました。1年強で50年以上蓄積した創作エネルギーが爆発し、200点以上の作品を制作し、独自の筆や画材も考案しました。娘の邵雅曼さんは20代で永添芸術の執行長を務め、国際基準でのキュレーションを目指しています。
2020年の年次展覧会『狂・禅』は、この父娘による初めての共同展でした。展示は金馬賓館と晶英国際館をまたぎ、父親の「狂気」—経営哲学、処世術、爆発力—と、娘の「禅」—内省、静けさ、美への追求—が世代を超えた対話を形成しました。
創業者からアーティストへと身分を変える過程で、邵永添氏は行動によって金馬賓館の中核理念を証明しました。それは、芸術は一部の人々の特権ではなく、あらゆる生命の段階で発現しうるエネルギーであるということです。
国際的な評価と挑戦
開館から2年足らずで、金馬賓館は『Shopping Design』誌の2019年「台湾人文百景賞」を受賞しました。2020年には、世界最大の旅行ガイドブックである『ロンリープラネット』がこれを「高雄のおすすめ美術館」として評価しました。非公的で大財閥に支えられていない私立美術館にとって、これは異例の賛辞です。
これまでの主要な展覧会には、フランス人キュレーター Jérôme Neutres と協力した『アマン:思考するモノ』(2022-2023年)、新進気鋭のアマン氏のエキゾチック東アジアでの完全回顧展(2023-2024年)、そしてAI生成画像と音楽のインタラクションを組み合わせた『無穹・無限:邵永添』があり、これは邵雅曼さんと羅禾淋さんが共同で企画しました。
しかし、挑戦も現実的です。私立美術館が高雄(台北ではない)で継続的に運営するには、入場料250元は南部では安くはありませんし、来場者基盤も首都に比べて遥かに小さいのです。邵雅曼さんの対応は「外へ出る」ことでした。香港、上海、アムステルダム、ロンドン、ニューヨークの美術館と積極的に協力し、台湾のキュレーションエネルギーを国際的に発信することです。
建築そのものが展示品である
金馬賓館が最も特殊なのは、壁に掛けられた作品ではなく、建物そのものかもしれません。
そのファサードは三つの様式を融合させています:1965年の経済発展期に導入された西洋モダニズムの簡潔な線、日治時代の折衷古典様式の残滓、そして中国古典建築の記号です。水平的・垂直的な流れるような線、整然と並ぶ柱、帯状のデザインが織りなす正負の空間の交錯—建築史学者はその構造を「ミース・ファン・デル・ローエの幾何学的組み合わせに類似している」と言うでしょう。
永添芸術は修復において、ホルムアルデヒドを含まない塗料、環境ホルモンを含まない建材、循環型木製展示ケースを使用し、この60年の歴史を持つ建物を高雄における低炭素グリーン建築の模範としました。開館初期に植えられた植物は今や壽山森林と一体となり、都市の喧騒を遮断しています。
送別所から芸術の桃源郷へと変わった金馬賓館の物語そのものが、記憶、忘却、そして再生についての最高の作品なのです。
画像出典
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- 金馬賓館現代美術館の外観 — Photo: Adece033090 / Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0
参考資料
- 永添芸術・金馬賓館現代美術館公式サイト — 建築史(一次情報:高雄歴史博物館の史料、1959年/1967年の『聯合報』『経済日報』のオリジナル報道引用を含む)
- Wikipedia — 金馬賓館現代美術館
- VERSE誌 — 金馬賓館現代美術館:軍人駐屯地から芸術殿堂へ(邵雅曼氏インタビュー)
- 高雄画刊 — 金馬現代美術館が山林と融合し、低炭素グリーン美学を体現(2024年、ロンリープラネット推薦、グリーン建築、キュレーションの三軸線を含む)
- Shopping Design — ロンリープラネットに選ばれる!金馬賓館現代美術館が60年の軍用地を活性化(2020年)
- Lonely Planet — ALIEN Art Centre(英語ソース、国際旅行ガイドの評価)
- Shopping Design — 高雄金馬賓館の立役者邵雅曼氏にインタビュー(2021年、キュレーション三層構造)
- 500誌 — 優良人物:落ち着いた自信を持つ28歳の執行長 邵雅曼さん(2021年、邵永添氏の創作経歴)
- 500誌 — 金馬賓館『狂・禅』共同展 邵永添氏と邵雅曼さんの個展(2020年)
- Tatler Asia — 御盟グループの父娘、高雄に文化の泉を注ぐ(2024年)
- Harper's BAZAAR — 高雄で必訪の芸術文化建築13選(2025年、金馬賓館が必訪と評価される)
- ELLE — 金馬賓館『感応未来』イタリアランプデザイナーによる台湾初展(2023年、Jérôme Neutres氏のキュレーション)
- 御盟グループ公式サイト — 永添芸術・金馬賓館現代美術館