30秒でわかる概要:台湾では、病院の精密機器から銀行のATMまで、機械のあるところに緑色の乖乖(グアイグアイ)が置かれている光景が珍しくありません。この独特な文化は1990年代末に始まりました。エンジニアたちが「乖乖」という名前の語感(「おとなしい・言うことを聞く」の意)が機器を正常に動かすと信じたのがきっかけです。今ではBBCも専門記事で取り上げるほど、世界に知られる台湾の奇習となっています。
台湾のサーバールームに足を踏み入れると、ある光景に目が止まることがあります。高価なサーバーの上に、静かに置かれた緑色パッケージのスナック菓子——乖乖です。食べ残しの午後のおやつではありません。これは台湾のテック業界に長年伝わる「お守り」なのです。
交通大学から始まった都市伝説
この奇妙な習慣のルーツは、1998年以前の国立交通大学(現:国立陽明交通大学)にさかのぼります。2011年、明新科技大学の電算センター長・盧主任の回想によれば、「博士課程の頃から研究室に緑の乖乖を置いていた」とのことです。逆算すると、「機械に乖乖を供える」行為は1998年より前にすでに交通大学内で存在していたことになります。
最初に公の記録として登場するのは2003年のことです。『中国時報』の副刊に「フリーズが怖い?ならば乖乖を一袋どうぞ」と題した記事が掲載され、「台湾の多くの企業のサーバールームでは、サーバーの上に乖乖を置いて故障率を下げようとする」習慣が紹介されました。
この習慣を広く世に知らしめたのは、ある大学院生のエピソードです。乖乖の会社の総経理・廖宇綺氏がBBCに語ったところによると、論文執筆中にパソコンが頻繁にクラッシュして困っていた大学院生が、機械に何かお守りが必要だと思いついたといいます。「乖乖」という名前がまさに「おとなしく動いてほしい」というニュアンスにぴったりで、しかも緑色のパッケージが信号機の「青(通行可)」を連想させる——そこで緑の乖乖を置いたところ、パソコンが安定して動き、無事に論文を完成させることができたというのです。
乖乖の掟
台湾の乖乖文化には、暗黙のルールがあります。
緑色パッケージでなければならない:効果があるのはクリームコナッツ味の緑の乖乖だけです。緑色が機械の正常動作を示す「青信号」を意味するからです。黄色の五香味や赤色のチョコレート味は逆効果とされています。
賞味期限切れは禁物:期限が切れると加護の力が失われるため、定期的に新しいものと交換する必要があります。
食べてはいけない:乖乖は神聖なお供え物であり、食べると機械の故障を招くと言われています。
2009年、桃園空港の出入国管理システムが大規模にダウンした事件は、この禁忌を犯した典型的な事例として語り継がれています。ネットユーザー「生魚片」によれば、メンテナンスを担当した外注業者が引き継ぎの際にサーバールームの乖乖をつまみ食いし、翌日にシステムが36時間にわたってダウンしたというのです。単なる偶然かもしれませんが、そのタイミングのあまりの絶妙さに、「乖乖大神のご神威だ」と信じる人が後を絶ちませんでした。
テック業界から社会全体へ
乖乖文化はやがてテック業界を飛び出し、台湾社会のあらゆる場面へと広がっていきます。2004年の総統選挙前には、戸籍事務所が肝心な場面でコンピューターがダウンすることを恐れ、端末の前に乖乖を置きました。2011年には基隆のある銀行でATMの故障が続き、修理担当者が筐体内に乖乖を2袋入れたところ、写真がネットに拡散して大きな話題を呼びました(後に撤去)。
2014年には雲林県虎尾の警察署管内で重大な交通事故が相次いだことを受け、署内に緑の乖乖を5袋置いて安全を祈願しました。ところが、ある日巡査部長が1袋を食べてしまい、翌日に死亡事故が発生したと伝えられています。
国際メディアも驚嘆
2021年、英国BBCが「台湾人がどのように緑色スナックをお守りとして使っているか」と題した記事を掲載し、国際的な注目を集めました。台湾のネットユーザーたちは「国家機密がバレた」「高い歩留まりの秘密が流出した」と笑いを交えてコメントしました。
この現象は航空業界にまで及んでいます。スターラックス航空(星宇航空)の会長・張国煒氏が会議室に緑の乖乖を置いて新機体の納入を祈願し、その写真がSNSで拡散。廖宇綺氏は自ら乖乖を持参して張会長にサインを求め、将来的に「乖乖特別塗装機」の実現を夢見ていると話しました。
科学と迷信の絶妙なバランス
論理とデータを重んじるテック時代に、なぜエンジニアまでもが乖乖の力を信じるのでしょうか。答えはおそらく、コスト・パフォーマンスの計算にあります。「システム障害」が引き起こす甚大な損害と比べれば、乖乖一袋でお守りを試みるコストはほとんど無視できるレベルです。エンジニアたちがよく口にするように、「万が一にでも効果があるなら、試す価値はある」のです。
この「信じても損はない」という心理が、乖乖を台湾テック業界で最も影響力のある「神様」へと押し上げました。『台湾都市伝説百科』の言葉を借りれば、「コンピューターが原因不明でクラッシュする問題が解決されない限り、乖乖大神は存在し続ける」のです。
そしてコンピューターをクラッシュさせない完全な方法など、ほぼ存在しません。だからこそ、テクノロジーと信仰が交差するこの台湾の地で、緑色の乖乖はこれからも精密機器を静かに見守り続け、理性と迷信の間にある、最もユーモラスなバランス感覚を体現し続けるのでしょう。